はるか昔、言葉はひとつだった。
人間たちは神に近づこうと、天まで届く塔を築く。
怒った神は言葉を乱し、世界はバラバラになった―。
旧約聖書に記された「バベル」の物語だ。
現代、我々の住むこの世界はどうだろう。
国と国は憎しみ合い、民族間の争いは絶えず隣人や家族とさえも心を通わせることができない。
急速な情報化の波が、我々の魂をさらに孤独なものにしていく。
言葉が通じない。
想いも伝わらない。
心はどこにも届かない。
我々バベルの末裔は、永遠に分かり合う事ができないのか?
我々は争いが絶えない世界の住民である前に、同じ星に生きる命のひとつではなかったのか?
耳をすませば聞こえるはずだ。初めて世界に響く、魂の声が―。
2007年、世界はまだ変えられる。
届け、心。
―映画「BABEL」―